猫の慢性腎臓病 其の3

6月ですね。暑いですね。自分が子供の頃はさすがに梅雨前にこれだけ暑いことはなかった気がします。
くれぐれも熱中症に気をつけましょう。病院を受診する熱中症の動物のほとんどが車中への放置です。
仮に10分間だとしても非常に危険ですので、細心の注意を払ってあげて下さい。

さて、今回は猫の慢性腎臓病の第3回です。今回が最終回ですが、よく受ける質問の中で重要なものをピックアップしてみます。

問.食べなくて困っています。体重も徐々に減ってしまって。どうしたらいいですか?

答.これは腎臓病の猫さんでもっとも多い悩みで、解決が難しい問題です。
食べない腎臓病食を頑張って続けて痩せるよりも、食べる市販食を適宜与えて体重を維持する方が良いことは間違いないでしょう。
急に調子が悪くなるのであれば腎臓病以外の病気が新たに発生していないかはチェックが必要です。
また、食欲増進剤としてレメロン錠(ミルタザピン)は有効でしょう。ただし、これは人間の抗うつ剤の1つで慎重に使う必要がありますのでご相談下さい。

 

問.吸着剤や活性炭の効果を教えて下さい。

答.コバルジンやネフガードが有名ですね。これらはごはんと一緒に飲むことで、腸管内毒素などが吸着されてそのまま便に排泄されるというものです。
内服することで血液検査の尿素窒素の数値が低下することも報告されています。
ただし、慢性腎臓病の余命を延長する効果は証明されていません。また顆粒状もしくは錠剤であるため内服を続けることが大変でしょう。
さらに腸管内の毒素以外に体に必要なものや他のお薬の成分を吸着しますので、その点にも配慮が必要です。

 

問.飼い主が自宅で皮下点滴をすることはできますか?

答.はい、可能です。動物病院によっては自宅での皮下点滴を認めていない病院もあります。
腎臓病の猫さんの通院ストレス、病院に来ると豹変する(怒る・パニックになる)、飼い主さんが病院の診察時間に来ることができない、などの場合は、皮下点滴のセットをお出しします。皮下点滴の方法もお伝えできます。

 

問.腎臓病になってから吐くことが多いのですが、何か対策はありますか?

答.吐いてしまう原因はいくつか考えられます。尿毒症の1つの症状かもしれませんし、高齢や腎不全の猫さんに多い便秘が原因かもしれません。
腎不全でよく吐くことに対する対処は、
・充分な水分をとること・・・水分の経口摂取、皮下点滴
・便秘があれば対処・・・充分な水分、ラクツロースシロップの使用、重度なら浣腸
・制酸剤(H2ブロッカー)の使用・・・CMで見かける人でも有名なガスター10など。腎臓病になると慢性的な胃酸過多になりやすいことが知られています。
・その他の薬を適宜使用・・・当院ではプロナミド(モサプリド)をよく使います。ただし犬の薬なので猫では効能外使用ということになります。

・・・
実際にはその他にたくさん質問もありますし、知りたい情報もあるでしょうが、全国のネットユーザーにも有用であろう情報をメインに書きました。
この世の中、インターネットを見れば出所の不明な情報が、当たり前のことのように記載されています。
それらは、正しい情報、間違った情報、正しいか間違いか判断のつかない情報に分けられると思いますが、今回の記事を参考にそういった情報を眺めて頂くと有用な情報を取捨選択しやすいではないかと思います。(ほとんどが真偽不明な情報です。)

3回にわたって猫の腎臓病に関して書きました。参考にして頂けたら幸いです。
当院の患者様からは「更新遅いよ! (●`Д´●)ノ」という声も聞こえてきました。

たしかに! 更新頑張ります!


猫の慢性腎臓病 其の2

前回は「猫の慢性腎臓病 其の1」と題しまして、その概略と診断について書きました。

2回目となる今回は慢性腎臓病と診断された後の治療と維持の仕方について記述していきます。

まず、現在、犬と猫の慢性腎臓病の進行具合は、IRIS(アイリス)分類というものが一般的に用いられて評価されています。
ですので、まず慢性腎臓病(腎不全)と診断されたら、獣医さんに、「アイリス分類のステージいくつですか?」と聞いてみましょう。
なぜそこが重要かというと、それぞれ1〜4までのステージ別に治療の指針が国際的に示されているからです。

なんだか難しそうに聞こえますが、いたってシンプルな分類で、血液検査のクレアチニンの数値でステージを決めるだけなのです。
そこに補足として、尿タンパククレアチニン比血圧を参考にします。
意外と簡単!
(もちろん、前回のような流れで慢性腎臓病としっかり診断してからステージ分類します)

でもでも、採血してクレアチニンの数値を測るのはよいとして、猫で尿検査や血圧測定を行うためには大前提として、「猫さんが検査に協力的なこと」、これが不可欠です。(こんなこと書いてると当院の患者さんから悲鳴が聞こえてきそうですが・・・)
ですので、どの検査をどこまで行うか・行えるかは獣医さんとしっかり相談しましょう。

さて、それでは1〜4のステージ別にどんな対処をしていくのかを紹介します。一般論に加え私の意見も加えて具体的に書いていきます。

  1. ステージ1(クレアチニン 1.6未満)
    ・腎毒性のある薬剤の中止もしくは減量(例:消炎鎮痛剤やビクタスなどの抗生物質)
    ・食事の見直し(シニア用フードへの切り替え)
    ・常に猫が水分を充分摂れるような配慮
    ・他の病気の適切な治療
    ・可能なら血圧測定と、タンパク尿があれば尿タンパククレアチニン比を測定する
    ・高血圧がある場合(収縮期160mmHg以上)に血圧の薬を使用する(例:アムロジピンなど)
    ・尿タンパククレアチニン比が高い場合にACE阻害剤を使用する(例:フォルテコール、セミントラなど)
  2. ステージ2(クレアチニン 1.6〜2.8)
    ・ステージ1の対処を継続
    ・腎臓病用の治療食の使用(例:ヒルズk/d、ロイヤルカナン腎臓サポートなど)
    ・血液検査でリンとカルシウムの測定も必ず実施する。
    ・リンの数値が高ければ、リン吸着剤を使用する(例:レンジアレン、カリナール1など)
    ・場合によっては定期的な皮下点滴を検討(症状や状態によるので獣医さんと相談を)
  3. ステージ3(クレアチニン 2.9〜5.0)
    ・ステージ1・2の対処を継続
    ・食事や飲み薬でリンの数値が5.0以下になるようにする
    ・とはいえ体重を維持できるように充分に食べる食事も必要
    ・個人的に定期的皮下点滴はしておいた方がよいと思います(ペースは相談して下さい)
  4. ステージ4(クレアチニン 5.0越え)
    ・ステージ1・2・3の対処を継続
    ・食事や飲み薬でリンの数値が6.0以下になるようにする
    ・獣医さんとよく相談して、チューブを使った強制給餌、腹膜透析、皮下留置カテーテルによる皮下点滴など検討する
    (人間で一般的にされている血液透析と腎臓移植は手段としては存在しますが、現実的ではないでしょう)

以上端的にまとめますと、
・水分摂取(皮下点滴どうするか)
・食事の管理(療法食?食べないときどうする?)
・リン吸着剤の使用
・ACE阻害剤と血圧の薬は検査の結果で使うか決定

ということになります。

それでは次回は一問一答で、実際によく聞かれる質問に対する答えという形式で書いてみたいと思います。

〈余談〉
最近は病院が混雑し、お待たせすることもあり申し訳ありません。
春の犬の予防シーズン中ではありますが、それほど予防で来院される患者さんは多くありません。(少なくもないですが・・・)
やはり紹介などで比較的重い病気の診断・治療で来院される方が多いことが影響しているかなと思います。
病院業務の効率化を頑張らないかんですね。また時期がくれば人員の拡充もしないといけないかなと考えています。でも病院が大きくなっても混むようになっても雑にだけはならないように気をつけます!


猫の慢性腎臓病 其の1

「内科が得意!」

そんなことを自己紹介に書きながら、徒然なるままにブログを書き綴ってきました。たまには学術的なことも書かないと、ただのウェブ好きの獣医さんで終わってしまいますので久しぶりに真面目に書いてみたいと思います。初の連載ものスタート!(*・∀・*)V

猫の慢性腎不全

概論
腎臓の主な仕事は血液からおしっこを作ることです。血液中の老廃物をおしっこ中に捨て、余分な水分はおしっことして排尿されます。

傾向
獣医療の発展や、優良なキャットフードの開発、何よりも飼い主さんの飼育意識の向上による予防・早期治療から猫の寿命は非常に長くなりました。20歳を超える猫もけっして珍しくなくなりました。そんな中で、『がん』と『腎臓病』は猫の長生き病とも言えるほど一般的になりました。

定義
以前は、『慢性腎不全 Cronic renal failure:CRF』と呼ばれ、やや末期的な「腎臓の病気」というニュアンスが強い表現でしたが、ヒトの医療界での提唱もあり、現在は全身と密接にかかわり合う腎臓の病気という、もっと広い意味合いで、『慢性腎臓病Chronic kidney disease:CKD 』と表現したほうがいいんじゃないか変化してきました。

猫では10歳を超えるとその発生率が急増するため、定期的なチェックを行い、早い段階で慢性腎臓病と診断し、対処していくことが望まれます。

診断
慢性腎臓病の診断には何が重要だと思いますか?

血液検査? たしかに重要な検査であることに違いないですが、血液検査で異常値が出た時点で既に腎臓の機能の70〜75%以上が失われた状態なのです。

大事なのは、そう、おしっこの検査、尿検査なのです。慢性腎臓病の初期ではまずおしっこが薄くなるのです(ごくまれに例外あり)。飼い主さんが家で気づくとすると、おしっこを多くするようになったタイミングです。ですので血液検査のみで慢性腎臓病(腎不全)と言われたとしたら、それは随分乱暴な診断(?)です。

診断のためには、まずは体重など身体検査、他の病気の存在の確認、尿検査、血液検査と進み、レントゲンや超音波などの画像診断も合わせて総合的に判断する必要があります。血圧測定もしたいところです。
さらにタンパク尿であれば、尿タンパククレアチニン比を測定しましょうというのが現在のスタンダードになっています。

ここで気づくことができれば早期発見と言っていいと思います。(それでも既に腎機能はかなり失われています)
この時期が慢性腎臓病の4段階の1段階目=ステージ1と言われていて、この時期から食事療法を開始し、タンパク尿であれば飲み薬を開始したいところです。(さらなる早期診断としては、尿中の微量蛋白の検出や、イオヘキソールクリアランスの測定などが試みられていますが、専門的過ぎるので割愛します。興味のある方やセカンドオピニオンの方は聞いて下さい。)

「猫の慢性腎臓病 其の2」につづく・・・ 次回はよく相談を受ける診断後の維持の仕方に関して書きたいと思います。

ーーー追記ーーー
今回の話はちょっと難しい内容かもしれないですね。でも猫の飼い主さんはぜひ目を通しておいて下さい。ちなみに犬の腎不全に対するアプローチもほぼ一緒です。

さて、4月も間もなく終了します。病院はそれほど混みすぎることもなく、ヒマすぎることもなくといったところです。
ゴールデンウィークも休まず診察しますので何かあればご相談下さい。
ゴールデンウィーク中に1日くらいどこかに出かけたいところです。開業以来の一番の遠出が大高のイオンなので、もう少し遠くへ足を伸ばしたいですね。最近の遠出といえば新瑞橋のイオンくらいです。ナゴヤドーム前のイオンにも行きました。
こう書くと何だかイオン大好きみたいですね。。。。そういうわけでもないんですが。。。

関東に住んでいた頃に一番よく行ったのが埼玉県越谷市のレイクタウンというショッピングセンターです。(⇒日本最大のイオン)

・・・イオン好きです!(T□T) 子連れに優しい店舗作りが素敵!
注:名古屋みらい動物病院はイオンとは関係ありません。あくまで院長個人の趣向です。